----- 麻耶へ -----
警察から呼び出しがあった。
もう、帰れないと思う。
だから、病院へは行けない。
麻耶、騙すつもりはなかった。
結婚したいと思った時に辞めたかった。
子供が出来たって聞いた時も
辞めたいと社長に相談した。
遅かったんだ。
俺の決断がもう少し早ければ
麻耶に辛い思いをさせなくて済んでた。
待っててくれとは言えない。
父親になる資格も勇気もないんだ。
本当に悪かった。
-- 龍二 --
頬に涙が伝い、手紙を濡らした。
龍二の気持ちが嘘じゃなかった事に
喜びを感じた。
だけど、龍二の意思は変わってなかった。
手紙と一緒にお金も入ってたから
一人で産む事も許してはくれない。
-----中絶。
それを思うと、こめかみが疼き
押し寄せた恐怖が身体中の体温を
奪っていった。
「君を産んであげられない」
一人呟いた。
母親が、ドアの向こうですすり泣いてた
事には気付きもしなかった。