龍二は分かってたんだ。

いつか仕事が出来なくなる日が来るのを。

それでも、私と結婚しようと

子供が欲しいと願った。

それが最悪のタイミングで訪れた。

愛してるの言葉も・・・

優しく抱き寄せてくれた腕も・・・

嬉しそうな笑顔も・・・

嘘じゃなかったんだよね。

私も嘘じゃなかったよ。

愛してたし、子供が出来た時は

神様に感謝もした。

龍二と子供の手を繋いで歩く姿を

想像して幸せだった。

ずっと続くと信じてた。



お昼近くになって、母親が部屋をノックした。

泣き疲れて眠ったらしい。

昨日のままの服だった。

「どうしたの?」

「ポストに・・・龍二さんから・・・」

母親も何か察したんだ。

だから、そんな暗い顔をしてるんだね。

「ありがと」

「麻耶?」

心配そうな母親の視線を感じた。

「後で話す。一人にして」

悲しそうな顔で微笑みながら

母親は、静かにドアを閉めた。