タクシーに乗り込み

行き先を告げる口調も荒くなっていた。

すいません、と呟くと運転手は怪訝そうな

顔をミラーに合わせた。

夜の暗さも、煌びやかなネオンも

道行く若者たちにさえ腹が立った。

麻耶は、悔しかった。

信じてた自分を嫌いになった。

騙してた龍二が憎かった。

だけど、赤ちゃんだけは愛おしかった。

親への説明とか梨恵への言い訳も

考えつかない。

部屋に戻り、ベットに身体を投げ出した。


-----一人で産む。


現実にはとても難しい事だと思う。

どちらがこの子の為になるのか

それも分からない。

私は、龍二の何を見てきたのだろう。

何一つ疑いもしなかった。

聞いたら答えてくれてたのかもしれない。

だけど、信じてたから

その必要はなかったんだ。

そう言えば、こんな事言ってたね。


-----今は、金がある。

   それがいつまで続くかは分からない。


-----金目当ての女は要らない。