其処へ龍二が帰宅し、慌てて駆け寄った。
「麻耶、どうした?」
「嘘だよね?あの夢は嘘だよね?」
龍二は、何の事か分からず
麻耶を抱きしめる事しか出来なかった。
「龍二、赤ちゃん産めるよね?
龍二、龍二、答えてっ!」
麻耶は、声を荒げて
泣きながら懇願していた。
だけど、彼は答えなかった。
いや、答えられなかった。
これから、刑務所に行く男の子供を
産んでくれとは・・・
口が裂けても言えなかったんだ。
泣き叫ぶ麻耶の背中を撫でながら
龍二が話し始めた。
俺の仕事は、ブランド品のコピー物を
安く仕入れて、本物と騙して売る
という犯罪行為をしていた。
海外で仕入れて日本で売る。
だから、出張が多かったんだ。
保険会社に入って行ったのは
その裏筋に会社があるから
抜け道として使っていた。
出張が減ったのは、以前とトラブルの時
逮捕者が出て経営が出来なくなったからだ。