携帯で暇潰しをしながら待っていると

眼の前に黒い高級車が止まった。

運転席の窓が開き、彼が顔を覗かせた。

「乗れ」

立ち上がり、戸惑いながら車に近付く。

こんな高級車に乗った事もないのに

迎えに来て貰えるとは・・・

麻耶は少しだけ

お金持ちになれたような気がして

不覚にも気持ちが弾んでしまった。



中華料理の店に連れて行かれ

丸いテーブルに、向かい合わせで座った。

頼み聞いてくれるか、と言っておきながら

返事を待たずに話し始めた。

マンションを引っ越したばかりで

荷物が片付かないんだ。

月の半分位は、出張で家を空けるので

必要最低限の物しかない。

足りない物は、買ってくれて構わないから

と10万円を差し出した。

麻耶は、突然の提案に驚きの声を上げた。

「信用出来ないか?」

「はあ?」

信用して大変な事になりそうな気もするし

たまにはオイシイ話もあるものだとも思った。