麻耶は時間が気になり

鞄から携帯を出すと下に落ちてしまった。

「また、やっちゃったぁ」

そう呟いて手を伸ばすと

彼が先に拾い上げてくれた。

「ありがとうございます」

手を出しても渡してくれない。

「返して下さい」

麻耶の言葉を無視して

彼は携帯を開き、ボタンを押した。

「何するんですか?」

「俺の番号」

「はあ?」

「来週は出張だ。

 帰ったらメシでも食おう」

「何言ってるんですか?

 あなたと私は住む世界が違います!」

「確かに違うな」

「だったら・・・」

「待ってた、と言ったら?」

「意味が分かりません」

「話がある」

私みたいな平凡な女に

何の用事があるのだろう。

彼なら女には困らないはずなのに。