「さっきも、餌だけなくなってて

 自分でつけたんだけど・・・」

「つけ方が悪かったんだな」

龍二は、自分の餌箱から大量の餌を取り

麻耶の針に刺した。

「これだけつけたら、麻耶にも釣れるか?!」

笑いながら麻耶に手渡してくれた。

「もう!馬鹿にして~!」

麻耶が背中を思いっきり叩いても

彼は笑いながら麻耶を見ていた。



麻耶は、自分の竿に集中して

その時が来るのをずっと待っていた。

すると、龍二が眩しそうに顔に手を翳し

麻耶に声をかけた。

「考えたか?」

麻耶は、すぐには答えられず

暫くして、視線を竿に向けたまま

小さく頷いた。

どうだ、と聞かれ正直な気持ちを

彼に告げた。

あまりにも違い過ぎるので出来ないと・・・

その言葉に、龍二は豪快に笑った。

好きか、嫌いか、それだけの問題だ。

金持ちとか貧乏が結婚に関係があるのか。

俺は、今は金がある。

それがいつまでも、なんて保証はない。

だから、金目当ての女は要らないんだ。

俺は、麻耶みたいな女が良いんだ。

龍二は、麻耶と竿を交互に見ながら答えた。