麻耶は、隣町の大きなお寺に来ていた。

神主さんに御祓いをして貰い

水子地蔵にお供えをした。

ロウソクと線香を立てて、掌を合わせた。

ごめんなさい、と何度も呟き

パパは一緒じゃないんだ、と心で言った。

眼を開けて、水子地蔵を見上げると

真っ赤だった。

また、あの夢が・・・

だけど、龍二の部屋で蘇った映像と違って

私と龍二と赤ちゃんが見えたんだ。

あの時は、赤ちゃんだけだったのに・・・

赤ちゃんが許してくれてるような気がして

パパを待ってるような気がして

麻耶は泣き崩れていた。

「大丈夫ですか?」

背中で優しい声がした。

麻耶は振り向かず、無言で頷いた。

「みんな事情があるんですよね。

 だけど、それは親の都合で

 赤ちゃんの意思は何処にもないんです。

 だけど・・・忘れない事です。

 ずっと忘れず歳を数えてあげて下さい。

 会いに来てあげて下さい。

 愛しているよと伝えてあげて下さい。

 安らかに眠れるよう祈ってあげて下さい。

 それだけで良いんですよ」

「はい」

立ち上がる事も

振り向く事も出来なかった。