「麻耶」

言いながら立ち上がり駆け寄った。

「どうして?」

「お母さんが電話くれた」

「そうじゃなくて」

「社長が庇ってくれた。

 でも、時間の問題だと・・・」

「そう」

車に乗せられ、後部座席で横たわった。

龍二は、声がかれるまで謝っていた。

だけど、赤ちゃんは、もう居ない。

怒りも、悲しみも、あの子と一緒に・・・

「疲れてるから、帰りたい」

「ああ」

重たい空気の中で、息が詰まりそうだった。



家に着いて、車のドアを開けてくれた。

手を貸してくれたけど、跳ね除けた。

「出てきたら、会いに来ても良いか?」

「来ないでっ!」

「・・・そうか・・・」

「ありがとう」

麻耶は、足早に玄関へ向かった。

そのまま、ベッドに倒れ込んで泣き叫んだ。

泣きながら謝り続けた。

龍二ではなく、赤ちゃんに。

謝って済む事じゃないと分かっていても

それしかしてあげれる事がなかった。