彼は、ブランドのカバーが付いた
システム手帳に、マンションの住所を書き
鍵と一緒に渡してきた。
「まだ、信用出来ないか?」
麻耶は暫く考え
龍二の眼を真っ直ぐに見つめた。
その眼に、嘘はないように思えたんだ。
「分かりました。この10万円分は働きます」
「よし!悪いようにはしないから」
今までで、一番優しい口調だった。
家に帰ると、梨恵がリビングで寝ている。
「風邪ひくよ!」
麻耶が梨恵の身体を揺すると
髪をかきあげながら起き上がった。
「遅い!」
「仕事が片付かなかったから。
ご飯は食べたの?」
「うん。お風呂も入ってきた」
「泊まるの?」
「うん。明日は休みだから買い物行こう!」
「そうだね。
私も行きたい所があるから付き合って」
梨恵は、眠そうに眼を擦りながら
何処よ!と興味深々の表情。
騙されてるよ!と息巻きながらも
麻耶と同じように、オイシイ話だ
と羨ましがってもいた。