「…本題はなんですか?」


遥輝の話はもう聞きたくない。


話を早く終わらせたい。


「もう一度遥輝と会ってくれないかな」


「……なんで」


なんで会わなきゃいけないの。


もう会いたくない。


会っちゃいけない。


会ってしまったら、もう二度と別れられなくなりそうで怖い。


忘れられなくて苦しいのに、もっと苦しい思いなんてしたくない。


「今日は遥輝の誕生日。つまり、あいつの母親の命日だ」


「……」


知ってるよ。


きっと遥輝は今も苦しんでいる。


肉親を失った苦しみと戦っている。


そんな遥輝にとって私は、余計に彼を苦しめる元凶でしかない。


「僕は…父親失格だ。遥輝のことも、妻のことも、娘のことも、何も分かってやれなかった。妻と娘が亡くなって以来、遥輝には理解者がいない」


「…今からでも遅くないよ」


今から理解者になればいい。


私より父親である先生のほうがよほど良いに決まってる。


だって私は遥輝を傷つけることしかできないんだから。