その瞬間、ずっと迷子のようだった心が、正しい場所に戻っていくような感覚になった。
「ようやく、告白らしい告白になったね」
「確かにな。あのときは、お互い言葉が足りなかったから」
「はは、今思い返すと結構ひどいね」
 粋は涙の粒を溜めながら、小さく笑みをこぼす。
 その笑顔を見ると、あっという間に愛しさで胸がいっぱいになる。
 もう二度と戻れない“今日”を、誰と一緒に過ごすのか。何を想って終えるのか。
 いつ終わるか分からない人生を、どんな風に歩むのか。
 日々の出来事で流れて行ってしまう前に、考えなければならない。
 ……生まれ変わったらまた会いたいと、そう思える人が、いるのなら。
「私は、八雲にもう一度会うために、今日までを生きてたよ」
 粋は、目を伏せて噛みしめるようにつぶやく。
 全部の感情を、その一言に詰め込んで。
「俺も……粋に会いたかった」
 瞼を閉じて、途方もないほど長かった人生を思い出す。
今日という日のために、今までがあったように感じる。
「思い出せなくても、ずっとずっと、粋だけに会いたかったんだ……」
 生まれる前から、俺はずっと粋だけを探していた。
 前世で粋を愛した感覚だけを、頼りに。
 きっと、この世界にある奇跡のほとんどは、誰かを想う気持ちから生まれている。
「八雲……。見つけてくれて、ありがとう」
愛しい人の涙に、そっと触れる。
温かい感触が、指先を伝う。
 心臓がぎゅっとなる、この瞬間。
 言葉にならない、この感情。
 喜びも、愛しさも、切なさも、痛いほどに感じるのは、俺たちが今、生きているから。
 そして命は巡り、やがて誰かの、光になる。

end