気が付いたときにはもう、無意識に通話ボタンを押している。


ワンコールが鳴るか鳴らないかのタイミングで左耳からは、


「蒼ちゃん、ただいま」


久保田さんの甘い声が流れてきた。


「久保田さん、『きょういちにち』って、変換するのも、もどかしかったんですか?」


しかも、『ただいま』って、どれだけ私に会いたいんですか?


余裕の振りをして、久保田さんに飛ばす電波。


「ふふふ。『いますぐ』会いたいに決まってるでしょ」


電話越しの含み笑いが、優しくて嬉しくなる。