「蒼ちゃん!貸して?早く!はい!スマホ渡す!!」


近づいてきた久保田さんに捕らわれて、もつれあったまま、ふたりでカーペットのうえに倒れ混む。


突発的な出来事だったのに、きちんと私を庇って下になってくれた、久保田さん。


「…わ…、ケガとかなかったですかッ?!」


見下ろしたほんの数十センチの距離には、綺麗な久保田さんがいる。


長い睫毛が、陶器のような肌に細く繊細に影を落としている。


人工的な蛍光灯の下で、自然界でいちばん綺麗なものだと思う。


気が付いたら、見つめあっている。