蒼ちゃん。


私だけだった、ちいさなこの部屋に、久保田さんの甘い声が積み重なってゆく。


蒼ちゃん。


再度、名前を呼ばれる。


覗き込まれる気配がして、恥ずかしくて押し戻そうとしたら、手首を優しく掴まれた。


ゆるく拘束されている、両手首。


その力は柔らかく優しいのに、解こうとしても、決して解けない強さも併せ持っていて、焦る。


「…離してください」


小さく呟くも。


「やだ。離すわけないでしょ」


イジワルに呟き返される。