「どうぞ」

私がドアに向かって声をかけたら、社長が部屋に入ってきた。

「居心地はどうだ?

気に入ったか?」

そう聞いてきた社長に、
「多少は…」
と、私は答えた。

「あの…私が前に住んでいた部屋はどうなるんですか?

荷物はありますし、家具もまだありますし…」

「解約するしかないだろう」

「ええっ!?」

何かまたとんでもないことを言い出したよ…。

「君はもうここに住むことになったんだ、前の部屋に戻る必要なんてあるまい」

「そ、そうですけど…」

兄ちゃん、頑張れそうにないんですけど。

「ですが…2週間前に部屋の更新をしたばかりなので、できれば半年とか1年はそのままにしてもらえないかと」

もし解約をして、その後でここを出ることになってしまったら私は家なき子である。