自覚があるのかどうなのかはわからないけれど、その端正な顔でそんなことを言うのはあまりにもずる過ぎる。

好きになったらどうするんだ、このヤロー…。

そんなことを思っている私だけど、本当はもう社長のことを好きになっているのかも知れない。

私は頬に触れている社長の手に自分の手を添えると、
「ーー考えてみます…」
と、言った。

認めたくない気持ちと言いたくない意地、言ってしまったら負けと言うプライドが頭の中を回っていて…そう言うのがやっとだった。

「それは嬉しいな」

…これは気づいているヤツなんだろうな。

まるで勝ったと言うように笑っている社長に、私は心の中で呟いた。

「キスしてもいいか?」

そう聞いてきた社長に、
「いいですけど」

我ながら何を言っているんだろうと思うが、私は答えた。