「俺が社長に就任したばかりの時、営業で働いていた頃の君に出会ったんだ」

社長は話を始めた。

「君は確か、外国人に道を訪ねられていたな。

その時に君は流暢な英語で外国人に道を教えて、その外国人を助けたんだ」

社長が懐かしむように話をしたけれど、一方の私は覚えていなかった。

流暢な英語だと言っているけれど、英語に関しては大学時代に必修単位として勉強していただけである。

「その後で君は俺の会社に勤務していることを知って、いろいろと調べたんだ。

君の家族や育った環境、取引先からも高く評価されるくらいの有能な人間なのにどうして無能のフリをして仕事をしているのか、全て調べさせてもらった。

君のことを知れば知るほどに、俺は君のことを好きになったんだ」

社長は言った。