「…私にですか?」

「ここは俺の両親の思い出の場所なんだ。

辺り一面の紫陽花の前で父親が母親にプロポーズをしたと子供の頃に聞いたことがあったから、ぜひとも君を連れて行きたいと思っていたんだ」

そんな思い出の場所に私を連れてきてどうしようと言うのだろうか?

社長は私を見つめると、
「もうまどろっこしいことは言わない」
と、前置きをした。

「ーー門谷紀香、俺は君のことが好きだ」

「えっ、なっ…!?」

「結婚を前提に俺とつきあって欲しい」

そう言った社長の顔は真剣そのもので私はただただ見つめることしかできなかった。

「私を秘書に指名したのも、服とか化粧とか買って、家に住まわせた理由も…」

「全部君が好きだからやったことだ。

君のことが好きじゃなかったらここまでしない」

ああ、そうなんだ…と、思うことしかできなかった。