桜の花びらが一気に散り、二人の体に毛布のように覆い被さる。丘の上は一面ピンク色に染まり、まるでプールのようだった。

「あはは!花びらいっぱい!」

はしゃぐ咲也を見て、サクヤ姫は頬を赤く染めながら微笑む。そして、咲也の小さな手を優しく握り締め、言った。

「咲也、お前が大人になったらわらわと結婚しろ。わらわの夫になれ」

「けっこん……」

結婚、その言葉の意味はまだ八歳の子どもにはわからないことだ。ただ首を傾げて考える。サクヤ姫が言うことならきっと楽しいことなのかもしれないと思った咲也は、満面の笑みを浮かべる。子どもらしい無邪気なものだ。

「する!僕、サクヤ姫と結婚するよ!」

「そうか。お前が大人になるのが楽しみだ」

サクヤ姫は笑った後、咲也の頬に赤い唇を当てる。咲也は口付けすらもわかっておらず首を傾げ、それを愛おしげにサクヤ姫は見つめた後、再び顔を咲也に近付けた。しかし、今度は頬ではない。