咲也が話すも、浅葱は何も返してはくれない。だが、部屋の中からこちらの様子を伺うような視線は感じた。そのことに咲也は安堵しつつ、懐から手紙を取り出す。
「浅葱様に向けて手紙を書いて参りました。侍女に渡しておきますね」
浅葱に対する想いを込めた和歌を添えた手紙を侍女に渡し、咲也は今日は帰ることにした。これから手紙を定期的に送る日々が始まるのだ。
「浅葱様、今日は月が大変美しいです。きっとあなたも、あの月のように美しいのでしょう。……おやすみなさい」
浅葱は最後まで何も言ってこなかった。だが、帷の向こうで十二単を引きずる音が聞こえる。
(いつか、浅葱様と話せる日が来たらな……)
その「いつか」が叶った時のことを想像し、頰を緩ませながら咲也は自分の屋敷へと帰るのだった。
その日から、咲也は暇があれば浅葱の元を訪れ、手紙を届けるようになった。最初の二ヶ月ほどは浅葱は全く話をしてくれなかったが、少しずつ話をしてくれるようになり、侍女が書いた手紙をくれるようになった。
「浅葱様に向けて手紙を書いて参りました。侍女に渡しておきますね」
浅葱に対する想いを込めた和歌を添えた手紙を侍女に渡し、咲也は今日は帰ることにした。これから手紙を定期的に送る日々が始まるのだ。
「浅葱様、今日は月が大変美しいです。きっとあなたも、あの月のように美しいのでしょう。……おやすみなさい」
浅葱は最後まで何も言ってこなかった。だが、帷の向こうで十二単を引きずる音が聞こえる。
(いつか、浅葱様と話せる日が来たらな……)
その「いつか」が叶った時のことを想像し、頰を緩ませながら咲也は自分の屋敷へと帰るのだった。
その日から、咲也は暇があれば浅葱の元を訪れ、手紙を届けるようになった。最初の二ヶ月ほどは浅葱は全く話をしてくれなかったが、少しずつ話をしてくれるようになり、侍女が書いた手紙をくれるようになった。