「そこで、磨けば光る原石を見つけたんだよ」

「磨けば光る原石?」

「結果は不合格だけど。その子が歌った曲は、別れた彼女を想って歌った曲だったんだ」



私は思わずペンを握る手を止めた。

無意識に坂本さんが言う“磨けば光る原石”という人を、頭の中で勝手に悠に置き換えてしまう。

だけど、すぐにそんな想像は振り払って坂本さんに私は尋ねる。



「どうして、その原石が不合格だったんですか?」



そう聞くと、坂本さんはふふっと笑った。

それからいたずらっ子のような笑みを浮かべて私に問う。



「深山さんだったら、不合格の理由をどう想像する?」

「……」



私は考えた。

磨けば光る原石ってことは才能があったってことでしょう?

人に自分の想いを届ける歌をうたえていたってことでしょう?

別れた彼女のことを想った気持ちはきっと、審査員だった坂本さんの胸に響いたはず。

だって、“磨けば光る原石”っていうくらいだったんだから。