『本社では今日みたいなイベントの企画や、テレビ番組との連携をとったり、音楽の才能を持つ新人発掘するオーディションを開催したりしているんだよ』

『そんなすごいところに私が……?』

『深山さんは心から音楽が好きみたいだし、今日の仕事ぶりを見ていて思ったよ。この子は、うちの会社に必要な人材だって』



そんなこと今まで言われたことなかった。

私が会社に必要な人材……。

心が震えて涙がこぼれそうだった。

と、思ったときには涙がこぼれていた。


そんな私に驚く坂本さんだったけど、優しく背中を撫でてくれた。

嬉しくて、こんな素敵な人のもとで働けるなんて幸せで、温かい感情があふれて仕方がなかったんだ。

そんな私に坂本さんは言ってくれた。



『芸能界にデビューしていく人たちを“期待の新人”と呼ぶだろう? ……私は深山さんのことも、我が社の“期待の新人”だと思っているよ』



期待の新人。

そう言われて少なからずプレッシャーもあるけれど、今の私はそれを跳ねのけるくらいのやる気に満ち溢れていた。



『頑張りますので、よろしくお願いしますっ』

『こちらこそだよ』



そう言って、私は坂本さんと雇用契約を結んだ。

晴れて、私は本格的に社会復帰への第一歩を踏み出したのだった。