気持ちがよかった。

切ない曲調だけど、それでも楽しかった。

俺は、この瞬間生き生きとしていたんだ。

フィニッシュはうまく決められた。


歌い終えると、俺の体からは汗が噴き出していた。

息が切れている。


やりきった。

そう思った。


審査員の方々に改めて目を向けると、それぞれ表情が読めない3人の方々。

俺はなにを言われるかと不安に駆られた。

ぎゅっとギターを握りしめる。


ステージの下、真ん中に座って腕組みをしていた女性審査員の方が手持ちのマイクをもって立ち上がる。

評価、されるんだ……。

俺は、ギターを握っていた手を下ろし、言葉を待った。



「私は坂本と申します。君の歌を聴かせてもらいました」

「……ありがとうございます」