間近にある二重の瞳は深い色を湛えていて、私を居心地悪くさせる。
視線を上げなければ良かった。
こんな泉見なければ良かった。
私は逃げ回ってばかりの、泉に頼ってばかりの、どうしようもない人間で。
だから、首をふるふると横に振るしかない。
「手、離してって言ったのに」
「うん、でも、もう離したくない」
「いまでもそばにいるじゃん」
「うん、でも、もっとそばにいたい」
「……もう、どっか行ってよ!」
「無理。どっかになんて行けるわけない。莉世のところしかいたくない」
私の両手を包む温かさが、急激に膿んだ傷口のように弾けそうな熱さに変わった気がした。