ショッピングモールを抜けて、駅の改札前で、やっと泉は立ち止まった。
泉が振り向くから、手をつないだまま対面し、残っていたもう片方の手も簡単に攫われる。
見上げれば、細められた瞳に私が映っていて、せっかく引こうとしていた感情の波がまた戻ってきそうで、その視線から逃れるように俯いた。
何か言おうと頭の中から言葉を探したけれど、あまりにたくさんありすぎて選べなくて、結局は開きかけた口を閉じるしかなかった。
「莉世」
耳になれた声が鼓膜を震わせれば、同じように心も震えそうになった。きつく結んだはずの誓いが脆くも崩れそうになる。
「……もう、遠ざけないで、俺のこと」
手が熱い。目の奥が熱い。
喉が張り付いたように熱くて重い。
いつもどうやって息していたんだろう。
体中を苦しさが駆け巡ってどうにかなってしまいそうだ。
「莉世のそばにいたいから」
零れてきたその声に、私はうろうろと視線を彷徨わせながら、恐る恐る泉を見上げた。