その距離に肩がぴくりと跳ねてしまう。……怯んだことを気づかれたくないけれど、そのまま視線を合わせているのも息苦しくて外してしまう。

そうして、いいわけする小さな子どものように唇をすぼめて不満を投げる。



「なんで戻ってくるのよ。友達はいいの?」



泉の横で私を心配そうに見ていたあの子を思い出せば、もやもやとした感情が漂ってくる自分の気持ちが苛立たしい。



「別に平気」

「……文化祭の買い物だって、潤くんに聞いた」

「兄貴に会ったの?」



少しだけ泉の声が揺れた気がした。それがまた申し訳なくて、ますます泉を見ることができない。



「偶然、家の前で会って。泉もここに来てるって聞いたから」

「ふーん」



少し沈んだ相槌とともに、視界の端にあったダークブラウンの髪が消えて、代わりに手のひらがひらりと現れた。

差し出された手の意味がわからなくてそのまま見ていると、「手」と不機嫌そうな声が落ちてくる。


……手って、見ればわかるし。