泉の後ろ姿を見送らずに、横に視線を流す。
「あの、私もよそ見していたので、気にしないでください」
隣にいる男の人に言えば、大きく首を振るその人。
「そんなわけにいきません!本当にすみません!!洋服、弁償します!!」
「いえ、そこまで…」
「いや、でも、申し訳ないので!!」
「本当に、洋服も洗えば落ちると思いますし、大丈夫です」
男の人はなおもなにか言おうとしたけれど、私は膝をかがめて泣いている男の子の頭を撫でた。
「ごめんね、メロンソーダ、なくなっちゃったね」
男の子は驚いたように鳴き声を一瞬消して、直後、またしゃくり上げながら泣きだした。
「ひっく、、おねえちゃん、ごめんなさーいっ」
「ううん、いいよ、泣かないで。全然大丈夫だよ」
目線を合わせて笑顔を向ければ、男の子は涙をごしごしと拭って、男の人の足にすがりついた。
「本当に、弟が…いや、俺の不注意で……」
「弟さんなんですね。本当に平気なので、これで……」
あまり長居しても、同じような会話が続いてしまいそうな気がしたので、切り上げようと真由ちゃんの方へ向いた。
「真由ちゃん、ごめん、お手洗い行ってもいい?」
「もちろん、莉世~、大丈夫??」
ハンカチを差し出してくれるので、それを受け取りながら、男の人とその足に抱きついてこちらを伺っている男の子に、会釈をして別れた。