私は「いいじゃん別に」と口を尖らせ、とりあえず反撃する。



「泉こそ、なんでよ」

「ここ、俺の学校の最寄り駅だから」



しれっと言われて頭上の駅名を見れば、そうだったと気がつく。

さっきの彼とこの駅で待ち合わせしたのにその時も気がつかなかった。私どんだけいっぱいいっぱいだったんだろう。



そんな自分に苦笑いが漏れれば、泉に見られないように下を向いた。

見て欲しくないから俯いたのに、泉は上半身を少し倒して、私を下から覗き込む。



「まー、聞かなくてもわかるけど」



愉快そうに唇を少しあげていじわるな笑みを向けてくる。



「……性格ワルッ」



私は子どもじみた反撃しかできず、ぷいっと反対側を向いて泉の視線から逃げる。



確かに、私は昨日、いつものように隣家の泉の部屋に押しかけて「明日はデート!今度こそきっと大丈夫!」としつこく聞かせていたのだ。



あー、昨日の自分を全力で止めたい。そんなことしちゃダメだったよ!バカ私!

こんなところで会ったら誤魔化せない。絶対に心の中で私を嘲笑っている。わざとらしく「カレシどこかなー?」とか言ってくるんでしょどーせ。



想像しただけで、さっきとはまた違う種類の汗がじんわりと浮かんでくる。