会計をすませ店外に出て、真由ちゃんが気になっていたというアクセサリー屋さんへ行こうと話していたとき。
どんっと左肩に軽い衝撃があって、誰かにぶつかったのがわかった。咄嗟に謝ろうと顔を向けると、それとほぼ同時に、ばしゃっと冷たい感覚が頭上に走った。
えっ?!
その冷たい感触が、頭上から頬を伝って落ちてきて、さらに肩を濡らしたけれど、私はまだ何が起きたのか理解できていなかった。
「莉世!」
真由ちゃんの驚いた声に我に返って、自分の頬を拭うと、緑色の液体が手のひらを彩った。
……何これ?
そんなはずはないのに、濡れた感覚が昔の記憶を呼んでくる。
……絵の具?
どくんっと頭の奥で音が鳴った。
はっ、はっ、と短い呼吸を繰り返して、必死に止まってしまっていた呼吸を取り戻したいに、喉が張り付いたようにうまくいかない。苦しい。
手のひらから視線を液体が降ってきた頭上に上げれば、時間が止まっているかのように大きく目を見開いている男の子と目があった。
男の子は父親らしき人の肩に担がれるように抱き上げられていて、私と目が合うとびくりと肩を震わせた。
みるみるうちに男の子の目に涙が浮かんで「うわーーーーーーーんっっっ!!!」と大声で泣きだした。