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夏休みがもうすぐ終わりそうなある日。
家から出た私は、一瞬、フリーズしてしまった自分に嫌気がさす。
お隣だから、こんなこと今まで何度もあったのに。
隣家から出てきたその人がふっとこちらに視線を流したから、どきりと心臓が鳴った。
「あれー?莉世じゃん、なんか久しぶりだね」
屈託ない笑顔をくれるから、私も急いで頬を緩めた。
「潤くん、ほんと久しぶりだねー」
いま、私、普通に言えてたかな。声震えてなかったかな。
「どっか出かけるの?」
「うん、友達と新しくできたショッピングモールに行くんだ」
最寄駅から数駅先の目的地を伝えれば
「そーなんだ。じゃぁ駅まで一緒に行こう」
と言われてしまい、「へ?あぁ、うん」なんて妙なリアクションをしてしまった自分に激しく後悔する私。
おいおい、私。もっと普通にしてくださいよ……。
小さくため息をついて、自分のポンコツな心臓を奮い立たせる。