玄関から飛び出てきたその人を受け止めきれずに、ドタドタッと後ろに押されて倒れそうになる。


――― だめだ、転ぶ。


視点が傾いて反射的に目をぎゅっと閉じれば、背中を支えられ抱き寄せられた感覚があった。


――― あれ?



頭上からほっとしたような吐息が落ちてきて、そっと目を開く。

空を仰ぐように背後を見上げれば間近に泉の顔があった。



「……っ、」



後ろから首を倒して私を見下ろすダークブラウンの目の中に、はっきりと映っている自分を見つけて、その近すぎる距離に息をのんだ。

背中から伝わる体温とお腹のあたりに支える腕の感触があって、泉の胸の中にすっぽり収まってしまっていることに気がつく。


また、イヤミでも言われるかと身構えれば、泉は目を細めながら「セーフ」と小さく呟いて、唇に弧を描いた。


安心したような笑顔とともに泉の爽やかなシャボンの匂いがふわりと落ちてきて、どうしたらいいかわからなくて俯いた。



今日の泉、やっぱり変だよね……。



「……ごめん、ありがとう」



私の声と同時に、身体から泉の体温がぱっとなくなった。