莉世が居心地悪そうに顔を背ければ、白い首に光る汗が目に入ってくる。
どんだけ走って逃げてきたんだよ……。
もうそんなことやめて、俺にすればいいじゃん。
遠慮がちにペットボトルを受け取って、美味しそうに口に含む莉世を見ると自然と頬が緩んだ。
早くなる鼓動を押しとどめながら、額の汗を拭ってやれば触れた髪のしなやかさに心臓が騒ぎ出す。
莉世はぴくっと肩を反応させ、上目遣いに俺を見た。
その瞳は俺の向こうに兄貴を見ている透明な色。
……いいよ、それで。
隠してるつもりだろうけど、全部バレてるってーの。
そんな後ろめたそうな顔することないよ。
莉世に気づかれないように、小さく息を吐き出す。
ほーんと、莉世ってばか。
いくらでもかわりにしてくれていいのにさ。
……莉世だけじゃなく、俺もばかだけど。