「………今日、お昼焼きそばパンだったでしょ?」



腕の中の莉世が唐突なことを言って、小さく肩を揺らした。



「体育の授業では、バスケやって。シュート外して遠藤くんに小突かれた」

「え、ああ、そうだけど…」

「でも、そのあとスリーポイント決めたでしょ?」

「……なんで知って…」

「それで、昨日はお昼休みにあった委員会の集まり忘れてて……花島さんに……連れて行かれた」

「……」



なんでそんなこと知っているのかわからなくて頭の中を疑問符だらけにして莉世を見下ろすと、俺を見上げているゆらゆらと切なげな瞳と出会った。



「……葉山さんがいつも学校での泉のこと、いろいろ教えてくれるんだよ」

「あの人が?」



脳裏にあのへらっとした笑顔を思い浮かべる。



「私が見れない泉のこと聞けて、嬉しんだけどね……」



そこで唇を尖らせ、ふいっと視線を外した莉世は、俺にぎゅうぅときつく抱きついて胸元に顔を埋めた。

しばらく黙ったままでいるから「どした?」とゆっくり頭を撫でる。

そうすると、さらにぎゅっと抱きついてきて、くぐもった声が聞こえた。



「……私だっていろんな泉見たいのに……。葉山さん、ずるい……………」