「やだ。……もう手繋がない」

「マジで?怒った?」

「……べつに」



ぷいっとそっぽを向いて唇を尖らせる。



「莉世。こっちきて。寂しい。お願い」



……そんなふうに言われたら、今度は心臓がきゅんと締め付けられるように鳴って、また違う意味で痛くて壊れそうだ。

そうして、あっけなく私の反抗は終わってしまうのだ。



立膝でずるずるとベッドに近づいて、泉の顔近くのマットレスの端っこにちょこんと手をかけて顎を乗せる。



「……怒ってるからね?」

「怒っててもかわいいね」



泉は私の前髪をすくって横へ流しながら、うっとりとしたようにいうので、また心臓が飛び出しそうになる。



「……熱に浮かされて幻覚みえてない?」



恥ずかしくて軽口を叩いたというのに、泉はまったく表情を変えず私の髪を撫でる。



「うん。莉世にずっと浮かされっぱなしなんだよ」



…………いや、ほんとに心配になる。病院行ったほうがいいんじゃ?