「……やっぱり、今日お姉ちゃんが帰ってくるの知ってたんだ」



首を横に傾けて顔を覗き込むように言えば、居心地の悪そうな泉と目が合う。

ふっと視線を外されれば、いたたまれない気持ちになるのは私のほうだ。



「そんな気にしなくていいよ」

「……ごめん」

「泉が謝ることじゃないでしょ。むしろ私がごめんだよ」



そう私は笑ってみせたのに、泉の方が泣きそうな顔をするから困ってしまう。



「……潤くん、お姉ちゃん帰ってくるの楽しみにしてたでしょ?」



あの人の名前を口にするだけで、喉の奥が張り付いたように塞がってしまう。

解放されたくて窓の外をみるけれど、景色があまりに早く流れていくから、そのスピードに気持ちが悪くなってしまう。


必死で息を吸い込んで、泉を見上げて明るい声を出した。



「今日はね、お母さんがいいお肉買ってきてしゃぶしゃぶするって張り切ってるんだよ」

「うん……」

「潤くんもうちに食べに来るかな」

「……まだ親たちは2人のこと知らないし、行かないと思う」

「だよねー、まだ来れないよね」



泉はなにか言いたげな目で私をみるけれど、気づかないふりをする。