なんか女の子たち怖いし、誤解もいいとこだし、もう泉は置いて帰ろう。


タイミングよくきた電車に乗り込もうとした時、くいっと腕を掴まれた。



「……置いてくなよな」



じとっと恨めしそうな目で見られるけれど、さっきの女の子たちが気になって、それどころじゃない。



「えーと、私、寄るところあるから」

「どこに?」

「……どこでもいいじゃん」

「だめ。今日早く帰んなきゃだろ」

「……えっ、ああ……」



言い淀んだ私を無視した泉に手を引かれて、一緒に電車に乗り込んでしまった。


車窓越しに、さっきの女の子たちが流れていく。

ちらりと見えたその表情からは、きっと誤解に拍車をかけただろうと想像できた。



「……とりあえず、手、はなしてよ」



睨めば、無言でするりと解放された。


泉はドアに寄りかかって手のひらで口元を覆って、親指だけで頬の上をふよふよとなぞっている。

それは見慣れた気まずい時の泉の癖。


気にしなくていいのに、と思えば自然と気持ちが緩んで笑いが零れた。