ある時から、蒼が私と仲の良い女子、詩音(しおん)と話しているのを見かけることが増えた。友達同士なんだと理解していたし、蒼が浮気するはずないと信じていた。でも、詩音と蒼の距離は付き合う前の私達みたいで、関係値で言えば近いのは恋人なのに、とても羨ましく思えた。

蒼は詩音と関わり始めてから、対応がガラッと変わった。尽くし気味なところが直り、わかりやすい特別扱いを辞めた。ウザいと感じることは減ったし、こっちのほうが付き合いやすくはなったけど、状況で判断した結果、私は浮気されたんだと誤解した。

それでも蒼のことは本気で好きだった。だから元々持っていた邪な考えに対する罰が当たったんだ。嫌われたんだ、と勝手にネガティブな感情にハマっていった。友達にも親にも恥ずかしくて相談できなかった。

あんなに楽しみにしていたデートも、いつしか行くこと自体、いや約束した時点で行くことがおっくうになっていた。浮気してるのにと思いつつ、誘われたのは嬉しいという何ともよくわからない感情でいっぱいだった。
さっさと別れればいいのに、勇気のない私は蒼に言うことができなかった。



結局、そのこじれた関係は元に戻ることはなく、別れてしまった。