茉莉さんの目が大きく広がって,何にも知らない流雨が口を開く。



「友達と約束してる」

「うん。分かった」



何が。

ただ素直に受け入れるふりは,そろそろ限界みたい。

だってほら,もう。

今の言葉を聞いた私は…息を止めたのか,吐き出したのかも分からない。

やっぱり聞きたくなかった。

分かってたから。

流雨の時間は,友達の時間。

先約なら仕方ない。

流雨と一緒にいられるのは,彼女の私じゃなくて…"友達"の茉莉さん。

例え,来月なんて誘っても,答えは『分からない』なんでしょ?

だって『友達との約束が入るかもしれないから』

流雨,あのさ,私は一体"何番目"?

もう,いいや。

帰ろう,少しでも早く。



『友達に戻ったら,もっと一緒にいて,笑ってくれる? 何よりも先に,私を見てくれる? 私の気持ちに,気づいてくれる?』



そんな,バカなこと,考える前に。