琴音が俺に一歩近寄って,顔を隠すようにおでこを当てる。

腹部に握られた片手が添えられ,丁度心臓の辺りに頭の重みを感じた。

ドキンっと心臓が鳴って,聞こえませんようにと俺は虚勢を張る。



「バカ…せめて,言ってからにしてよ……」



その顔は,また赤いんだろうなと俺は思った。



「えっ…言えば,急でも許してくれるの?」



俺だって,したいと思う瞬間がなかった訳じゃない。

ただ,今みたいに何にもない時,それだけの理由じゃあ怒られると思って。

つまり,ただびびってて。



「ごめん,じゃあ,もう一回だけしても,いい?」



緊張で声が震える。

琴音がピクリと反応した。

一瞬迷う気配を感じて,琴音は。