おい,どうにかしろ。

そんな目線が真鈴から飛んでくる。

真鈴も大事に想ってることには変わりないので,里桜に泣かれると弱い。

本当に,真鈴が琴音さんに惚れてくれて良かったと心から思う。

真鈴ならとっくに告白して,里桜の恋人になっていたって不思議はない。

俺が真鈴に,勝てるわけがないから。  

他の男子は,俺が少し目をきかすと告白すら諦めてくれる。

だから里桜が何か動かないかぎり,誰も里桜の恋人にはなりえない。

だけど真鈴は関係ない。

効かない上に,勝てない。

だから,本当に良かった。

……どうにかって,言っても…

泣いてる理由が分からない。

こんな事は初めてで,俺もぐずぐずと泣く里桜の前で,狼狽えるばかり。



「俺…別に琴音の事なんて好きじゃな…好きな人なんていないから」



里桜が俺達といられなくなることを不安がってるのは知ってる。

だからそれでかと思った。

でも,琴音が出てくると話は変わる。

真鈴が既に琴音を好きで,それに対して里桜は何も思っていなかったから。

なのに…

俺が琴音を好きだとだめ?

混乱は極みを越えた。
 


「泣くなよ里桜。里美がお前以上に優先することなんてないから」
 
「ほんと?」

「うん。そうそう。それより,俺らもう"大学生"になろうって言うんだから…泣き虫も一緒に卒業してこいよ」

「うん…」



気付けば真鈴が上手く里桜を宥めていて。

俺はまた悔しくなる。