「琴音,琴音…起きて」



流雨に揺り起こされて目を覚ますと,目の前に流雨の胸板。

びっくりして呼吸を止めると,流雨は安心したように息を吐く。

こっちはそれどころじゃないんだけど?!

ゆっくりと思い出せば,あぁと納得する。

流雨の肩で寝こけた私を起こそうと,流雨が体を捻っていただけだった。

温かい温もりから体を離す。



「次だよ,つづばし。帰れる?」 

「あっ連絡しなきゃ。出掛けるとしか伝えてないから…時間……」

「今しといた方がいいよ。俺は歩いて帰る」

「えっ」



迎え来ないの?

電車の外を見ると,もう真っ暗だった。

恥ずかしいし,お母さんも気まずいと思うけど…



「えと…乗って帰る?」

「え……ううん。大丈夫。この時間なら大したことないし,直ぐ着くから」

「そう」