目元を拭いながら走り去る後ろ姿を見て,俺は何も言えなかった。

琴音が泣くところなんて,俺だって見たことがなかった。

いつも,あの別れ話(瞬間)まで,琴音はいつも笑ってたから。



『流雨の彼女になれて,幸せだった……!』



本音もあったのかもしれないけど,きっと。

あれらは全部,琴音の最大限のやさしさだった。

日曜日,約束だからと遊ぶ気にもなれなかった俺は,断って。

ずっと考えていた。

何を間違えたのか,どうすればいいのか。



『今日で,丁度2年。だけど…ごめんね。流雨,私と,別れてください』



そう琴音が言った瞬間の,張り付けたような笑みが崩れる瞬間を。

俺は多分,一生忘れられない。