「私の前で,泣いたことなんて無かった琴音が。いつも誰の前でも笑ってる琴音が。泣いたの! あんなに簡単に涙を流したのは,きっと初めてじゃないから」



琴音のために声を荒らげる由芽さんは,きっと俺よりもちゃんと琴音を大事に想ってる。

浅はかだったと思い直しても,もうどうしたらいいのか分からない。



「言っとくけど,そうゆう状況があったからって,私は別れを促したりしてない。決めたのは,琴音自身だから」



そんなのは別れ話をされた時から,分かってた。

ずっと1人で悩んで,考えて。

やっぱり1人で決めたんだろうって。



「私は2人のこと,何も言えないけど。私は私の持つ権利で,琴音の居場所は教えない!」