みんなみんな居なくなって,ようやく。

流雨くんは初めて私の顔を見た。



「皆,帰っちゃったね」

「うん。良かった」



なんだろう。

なんでかな。

なんか,ドキドキする。

すっと,流雨くんが息を吸う音が,やけに耳に響く。



「琴音さん。俺,琴音さんが…好きです」

「ふぉぇっ?!」



爆弾が投下されて,私の呼吸は一瞬だけ乱れる。

変なところに空気が渡って,しゃっくりに繋がりそうだった。



「俺と,付き合って,下さい」



その間も,流雨くんがまだ続けていた。

最後まで聞いても,意味が分からない。

流雨くんはこんな冗談を言ったり,罰ゲームに乗ったりしない。

だからこそ,思った。

これは……夢? 夢なの?

心臓ばかりドクドク言って,なのに感情が追い付かない。

え,何で? 

相手が私。

それだけがなかなか信じられない。



「何で…」



もっと可愛くて優しくて頭がよくて…そんな子,このクラスにだっている。

身近な所に沢山いるのに…

両手で顔を覆うくらい,恥ずかしくて,嬉しくて,恥ずかしい。