「ほら俺がQRを出すから、読み込んで」
陸くんはそう言って自分のスマホで操作しQRを出した
あっ、私もやらなきゃ
ポケットから自分のスマホを出してLIMEを開く
今、スムーズにやっちゃってるけどこれ、結構すごいことじゃない?!
芸能人の個人情報!!
これは一般人としていいの?
受け取っちゃっていいの?
「開けた?できる?」
陸くんが私の顔を覗き込む
うわぁ、近い!!
「で、できたよ!今読み込むね!」
私は陸くんの画面に出ているQ Rを自分のカメラで読み込んだ
陸と書かれた画面が出てきた
ほんとに追加していいんですか?
これは…かなりレアなものなんじゃ…
「できたみたいだね、仕事の都合でレクまで学校に行けれそうにないから何か決まったらLIMEして」
「分かった!」
「じゃあ、またね、また仕事に行かなくちゃ行けなくて…写真部のみなさんもまた」
陸くんは扉付近に向けて言った
そこには私たちのことを見ていた写真部の人たちがいた
えっちょっと!すごくニヤニヤして見てるんですけど!!
多田先輩は見ているだけって感じだけど…
「またね!陸くん!いつでも遊びにきてね!」
美波ちゃんは返事をして笑顔で手を振っていた
陸くんはそれに返事するかのように笑顔で手を振り返し帰って行った
このために仕事の間を抜けてきてくれたの…?
私はそのまま陸くんが見えなくなるまで見ていた
陸くんは先にいる2人と合流し、見えなくなってしまった
私にはあの2人が秋ちゃんと和くんに見えた
2人で笑っているように見えるけど…遠いから確信ができない…
手も振って、陸くんを待ってるのかな?
3人できたんだ、ほんと仲良しだなぁ…
「ひ〜なっ!いつまで見てるの??」
美波ちゃんが私の両肩に手を置きながら聞いてきた
「見てないよ!ちょっと、頭がついてってないだけで…っ!」
ほんとにびっくりしてついていけないんだけど!
「朝比奈さん、陸くんと仲良いんだね」
伏見先輩までニヤニヤしながら聞いてくる
伏見先輩まで一緒になって言わないでよ〜!
「今のことは絶対に誰にも言わないでください!
広まったら私この学校に居場所がなくなります!」
絶対に知られたくない…
「えぇ〜!なんで?!自慢しちゃえばいいのに!」
私は美波みたいにはいかないの〜!
「いい?!絶対だからね!」
「は〜い…」
なんとか納得してくれた見たい、なんだかブツブツ言ってるけど…
まぁいっか
「さぁ、続きやろ!じゃないと終わらないよ〜」
伏見先輩はそう言って教室に入って行った
「さぁ行くよ!美波ちゃん!」
私は美波ちゃんを連れて教室の中に入って行った
このメンバーは嫌だってことはしないから安心できる
じゃなきゃこんなに楽しく部活はできていない
はぁ…なんだか疲れちゃったなぁ…
でも部活は部活だし、やらなきゃ
私は、全ての作業を終え、家に帰った__
部員に冷やかされながら…
_陸side_
転校初日___
俺は佐野 陸
高校2年、モデルの仕事をしている
今日から桜ヶ丘高校に転校する…らしい
今はその高校に車で向かっている最中
モデルの仕事が忙しくて前の高校には最近行けていなかった
それを心配した代表は、会社から一番近い高校へ転校するように言った
別に高校なんて行かなくたっていいのに
モデルの仕事をしてれば俺はいいのに…
仕事自体も嫌いじゃない
高校なんてこの先使うのかっていう化学や歴史を聞くだけじゃねぇか
それに、学校に行くと女子の相手もしないといけないのがめんどくさい…
はぁ…だるっ…
まぁ、代表が心配してくれたから行かないわけにはいかねぇ
それに秋と和も一緒だし、しょうがねぇな…
高校は昨日始業式だったらしいが昨日は仕事で行けなかった
「ねぇ、学校楽しみだね!」
隣で秋が話しかけてきた
何が楽しみなのかワクワクした顔でこっちを見てきた
「めんどくさいだけじゃねぇか、それにこれからずっと騒がれるのは疲れる…」
前の学校でやっと騒ぎがおさまって学校生活に慣れてきたってところだったのによ…
「まぁ、いいんじゃない?僕たちの本業は学生なんだから」
和もこっちを見て言った
はぁ…なんで学校に行かないといけないんだよ…
俺は思わず大きなため息をついてしまった
俺がモデルの仕事をしているのには理由がある
その理由はまたいつか話すとして…
「可愛い子いるかな?!僕、甘えても許してくれる子がいいなぁ〜」
「どうだろうね、いるかもしれないよ?」
2人で女子について話をしているようだ
秋は期待を込めてどこか上の空って感じ
和はクスッと笑っていた
俺たちの会社は恋愛に関して何も言わない
彼女ができても何か言うようなところじゃない
ただ浮気や不倫には厳しい
まだ学生なのに話がでかいんだよ…
「女子なんて芸能界にたくさんいるじゃねぇか、そういうところで探した方が早いと思うけど」
「確かに可愛い子や綺麗な子はいるけど、なんて言うんだろう…一般の?普通の可愛い子がいいんだよ〜!」
どうやら秋にとって芸能界と一般とまた違うらしい
「陸は、女子とか興味ないの?」
和に聞かれた
「興味ないな」
俺は女子が苦手
前から俺の周りには女子がいた
いつもいつもそいつらの相手をしなくちゃいけないのがしんどかった
そりゃ芸能界に入ったからには話をしないといけない時もある
その時は仕事用で対応をしている
「興味ないというか、陸は女子に縁がないんだよ、また運命の人に出会えるといいな」
和がニヤニヤしながらこっちを見てやがる…
ちっ、言うんじゃなかったな…
「僕も陸ちゃんみたいに運命の人に出会いた〜い!」
「…うるせぇ」
和のやついつまでニヤついてんだよ
秋まで一緒になって言ってきたじゃねぇーか
「これから、陸の恋の話が聞けるのが楽しみだな、秋」
「うん!楽しみ〜」
2人して楽しんでやがる…
あいつらがいう運命の人っていうのは前に3人だけでいた時に話したことがある
俺は中学の時、ある女子にあった
3年前___
俺が中学2年生、まだモデルをしていなかった時だった
中学の時から俺の周りには女子がいた
ある日、学校からの帰り道、女子から逃げるため人気のない商店街に逃げ込んだことがあった
商店街っていうのに誰もいない、お店もない
「静かなところだなぁ…」
俺は一人商店街の中を歩いていた
カシャッ
ん?
近くでシャッターをきる音が聞こえた
こんな中で写真を撮るのは誰だ…?
俺は辺りを見渡し、カメラを持った女子がいるのが見えた
その女子のカメラは俺の方を見ていた
うわっ、俺を撮ったのかよ、最悪
俺は写真を消してもらおうと彼女に近づいた
「ねぇ…何撮ったの?」
カメラのモニターを見ていた彼女に声をかけた
「えっ…」
その女子はカメラから俺の方の顔を向けた
うわぁ…可愛い子だな…
その女子は、長い黒髪をポニーテールで一つで縛り、
前髪は目にかかるくらい長めだけどそこから覗く目がでかい…
話しかけられると思っていなかったのか目に涙を浮かべて怯えているようだった
小さな鼻にピンク色に帯びたプルプルの唇には今にもキスしたくなる…
…って何を考えてるんだ、俺は…
「商店街…」
女子は振り絞った声で話した
声まで可愛いのかよ…
「見せて」
俺はカメラを指差して言った
「う、うん…」
女子は俺に言われるがままカメラを操作し、今撮った写真を見せてくれた
そこには俺は写っていなかった
というか商店街しか写っていない
誰もいない、静かな商店街って感じ
なんでこいつは誰もいないのに撮ってんだ?
俺は気になって彼女に聞いてみた
「誰もいないのに撮ってんの?」
少し待って彼女は口を開いた
「…この写真を見るのは私だけじゃなくて、他の誰かだから…
自分の思い出もいいけど風景から、自分を思い出し、
その人にとっての思い出が思い浮かぶと思って…」
こいつほんとに中学生か?
「あんた…すごいな…」
「…えっ」
まさか褒められると思っていなかったようだ
まぁ俺だって最初そのつもりで話しかけていなかったからな
「あんただったらこれからもっといい写真が撮れそうだな」
ほんとすごいよ、自己満足じゃなく誰かが見るって思っているところがすごいよ
「あんた、名前は?」
思わず聞いてしまった
制服からして俺の通っている中学じゃねぇな
「…朝比奈 雛」
朝比奈 雛か…
「ひなひなだな」
俺は思わず笑ってしまった
やべっ!気にしていることだったらどうしよ!
泣かれたらめんどくさい
「じゃ、じゃあな!」
俺はその場から離れた…