扉が開いた
そこから3人が入ってくる
なるべく静かに、音を立てないようにしてくれている
近くにある机に食べ物を置く
「雛ちゃんは寝ちゃったの?」
秋が静かに聞いてくる
「そうなんだよ、お化け屋敷から出たら泣いてな
落ち着かせるためにここに来たら寝ちまった」
「相当怖かったのね」
音がひなひなの顔を覗き込み寝ているのか確認している
「そんなに怖かったかな?僕の時は泣かなかったけど」
そうなんだよ
和と行った時はむしろ余裕そうに出てきたから意外と平気なのかと思った
「陸ちゃんが驚かしたんじゃないの?」
秋たちも変装をとき、いつもの姿に戻った
そんなことするかよ
そんなことする余裕すらひなひなにはなかったぞ
「暗い中で急に掴まれたり耳元から声が聞こえたり、そういうのは特に嫌いみたい」
そういうことか…
確かに今回はまさしくそれが起こった
前のお化け屋敷は脅かすようなことはしないものだったらしいからこんな風にならなかったのか
「で、なんでそんな体制なの?」
和が俺たちを見て言う
「朝比奈の方から来たんだよ、この方が落ち着くんじゃねぇの?」
俺たちがこんなに話していても起きる気配がない
「へぇ〜…雛がね〜
意外だったかも、意外と甘えん坊さんなのかな?」
矢野さんが嬉しそうに、でもびっくりしたような顔をしている
「陸ちゃん、よくその体制で我慢できるね」
「陸ならすぐ手を出すかと」
お前ら…
「出すわけねぇだろ」
今でもずっと手が出そうなのを我慢してんだよ
「でもそろそろ起こさないと冷めちゃうよ?」
秋が食べ物を袋から出しながら言う
確かにそうだな、そろそろいいだろ
「朝比奈?」
俺はひなひなの背中を軽く叩いて起こす
「ん〜…」
声が聞こえたから起きたと思ったが…起きない
「陸くんこう言う時はねこうすると効果的だよ
雛〜起きて〜
雛が好きな食べ物たくさん買ってきたよ〜」
矢野さんがひなひなの顔にポテトを近づける
揚げたばかりのいい匂い
「ん…?いい匂い…」
今までとは違う反応だ
「朝比奈?」
俺はもう一度声をかけてみる
「ん?陸くん?」
朝比奈が俺の体から顔をあげる
「落ち着いたか?」
陸くんが私の顔を覗き込んでいる
陸くんだけじゃない、音たちもいた
そうだ、私泣いちゃって陸くんにここまで連れてきてくれたんだっけ
その後…安心して寝ちゃったんだ…
「うん、ありがとう、ごめんね」
「いいよ」
陸くんは私の頭を撫でる
「さぁ!じゃあ雛ちゃんも起きたことだし食べようよ〜!
たっくさん買ってきたんだよ!」
秋ちゃんがみんなに声を掛ける
「食べよ〜!」
「僕も食べようかな、秋たちは何買ってきたの?」
3人は買ってきたものを見てどれを食べようか悩んでいるみたい
私も見たい
私は陸くんから離れようとする
「だめ」
陸くんが私は離れようとすることを拒み、腕を外してくれない
「え?」
なんで?だって、このままだと食べれないよ
「もう少しだけこのままでいさせて」
耳元で囁く
そんなことを言われたら恥ずかしいよ…
「で、でもこれじゃあ食べにくいし…
せっかく買ってきてくれたものが食べれないよ」
音たちがどんどん食べていく
あぁ〜!まだあるかな?
「分かったよ、じゃあ選んだら同じように来いよ」
寂しそうに言うから…
「うん、分かった」
私からの返事を聞いて陸くんは私から手を離し、立ち上がる
何があるかなぁ〜
机の上を見る
唐揚げにポテト、鈴カステラにフランクフルト、チュロス…
飲み物もある
たくさんある〜!
「どれも美味しそうで選べないなぁ」
「朝比奈は食べるの本当に好きだな」
選びながら笑う
「美味しそうなものがあると楽しくなるでしょ?」
私は唐揚げとポテトを手に取る
「まぁな」
陸くんもお好み焼きと肉まんを手に取りそのまま床に座った
「来いよ」
え?
私が頭にはてなを浮かべていると
「なんでだよ、早くこっち来い」
陸くんが食べ物を椅子の上に置き、私を引き寄せる
「わっ!危ない!」
私は陸くんの腕の中に入る
陸くんは私の手から唐揚げとポテトをとり、椅子の上に置く
そして体制をかえ、陸くんの足の間に座る形でおさまった
「これでいい」
すごく嬉しそう
声が明るいもん
「陸ちゃん嬉しそう」
「相変わらず目の前でイチャついちゃって…」
「陸…本当に変わったね」
みんなが食べ物を食べながら私たちを見ている
とりあえず
「あの〜…食べてもいい?」
私はみんなに聞く
「あははは!」
「雛ちゃんって面白いね!」
「そうだね、食べよっか」
みんなが笑う
和くんまで笑ってる
「フッ、そうだな
食べるか」
陸くんが椅子から唐揚げを取ってくれた
「うん!」
「僕ももっと食べる〜!」
私たちはみんなで食べ始めた
「これ、おいしいよ!」
「僕も食べたい!」
「この焼きそばもおいしいよ」
みんながそれぞれ焼きそばとカレー、串焼きを食べている
「これうまいな」
陸くんがお好み焼きを美味しそうに食べる
私もお腹すいた〜!
私は自分の手元にある唐揚げを食べる
あ〜!おいし〜!
「…本当に唐揚げが好きなんだな」
陸くんが私を見て楽しそうに笑顔を浮かべる
「別に唐揚げだけが好きじゃないもん!」
「はいはい、俺にもちょうだい?」
陸くんが口を開けて待っている
これって私が食べさせるの?!
「ほら、早く」
陸くんが私を急かす
私は唐揚げを陸くんの口に運んだ
「ん、うまいな」
陸くんも美味しそうに食べるよね
「そんなに食べたいなら、ほら、口開けろ」
陸くんが自分のお好み焼きを一口に切り、私の口に運ぶ
…おいしい
「おいしい…」
「だろ?」
自分が作ったみたいに喜んでる
キュンッ
こう言うのを自然とやられると私の心がもたないよ
私は顔が赤くなる
「朝比奈、耳まで真っ赤なんだけど」
陸くんが意地悪な笑みを浮かべる
「う、うるさい…!」
私はポテトを食べる
ん〜!これもおいし〜!
「雛〜私にもちょうだい!」
隣に座っている音がポテトを見てほしそうに言ってくる
「いいよ〜」
私は雛にポテトを渡す
私何か違うの食べようかな〜
私は机代わりにしている椅子の上を見る
チーズ肉巻きに餃子、大学芋、ワッフルにドーナツ…
ワッフルにしよ〜
私はワッフルに手を伸ばす
だが…届かない…
陸くんにしっかり掴まれていて手を伸ばしても後少し届かない…
後ちょっとっ!
私は前のめりになる