「それじゃあ大丈夫そうだね」
「あぁ」
そういって笑いかけてくれる姿が私は好き
「あっ!あった!みんなアイス食べよ〜」
「私チョコがいいな!」
「2人とも早く来なよ」
「待てって」
私たちはアイスを買って食べた
甘くて冷たいアイスはとっても美味しかった
「おいし〜!」
私はいちごアイスにした
辛いものを食べたあとだからかな?
いつもよりも美味しく感じる
「雛〜私にも一口ちょうだい?」
「うん!いいよ!」
私は一口分すくい、音の口に運ぶ
「ん〜!おいしい!私のも食べる?」
「うん!」
私は音から一口もらった
チョコははずれなしだよね!
「おいし〜!」
「僕も食べた〜い!」
秋ちゃんが音に欲しそうに言う
「一口だけだよ?」
そう言って一口秋ちゃんにあげる
「ん〜!おいしいね!」
辛いのは消えたのかな?
美味しそうに食べる姿を見て音もどんどんあげていた
アイスが無くなっても喜んでる秋ちゃんを見て満足してるみたい
本当に仲良いなぁ〜…
そういえば2人はまだ付き合ってないのかな?
告白するって言ってたけど…
「僕もいちご食べたいな」
和くんが私に聞く
「うん、いいよ!」
私は一口分すくい、和くんにあげる
和くんは食べ、私に微笑む
「どれもおいしいね」
「うん!ほんとだね!」
私は最後の一口を食べた
すっごく美味しかったなぁ〜…
「なんで全部食べちゃうんだよ」
陸くんが私の空になったアイスのカップを覗き込む
「食べたかったの?」
でも陸くんもいちごだったよね?
「もういい」
陸くんがそっぽを向いた
な、何?
「陸、嫉妬はそのくらいにしないと」
和くんが陸くんを見て笑っていた
嫉妬…?どこで?
「なんだよ、和だけかよ」
「音だって食べてたよ?」
陸くんだって見てたよね?
「はぁ〜…」
なんでよ〜!
音や秋ちゃん、和くんまで、私たちを見て笑っていた
「何が面白かったのかな?」
「知らね」
陸くんに言ってもこの返事しか返ってこなかった
「さぁ!次行こ〜!」
秋ちゃんの合図で次の目的地まで歩き始めた
そして、今私の目の前にあるのはお化け屋敷
音と秋ちゃんが行きたいって言ったからきたけど…
「行くぞ」
陸くんが私の手を引っ張って入ろうとする
待って待って私が嫌いなの知ってるよね?
「お化け屋敷は行きたいくない」
後ずさりをして陸くんに答える
でも、陸くんは離してくれない
「学生が作ったお化け屋敷なんて怖くねぇから」
陸くんが大きな声でそんなこと言うから作った人たちがこっちを向く
ほら〜!そんなこそ大きな声で言うから〜!
「私が嫌いなの知ってるよね?」
学生が作ったとか関係ない、お化け屋敷というのが嫌いなの
「でも、この前入ってたじゃねぇか」
「それは!雰囲気というか…あの時は行けるかなって思っちゃったの!」
音と陸くんに大丈夫って言われて和くんが一緒に行ってくれるって言ったからで
ずっと手を繋いでたしなるべく見ないようにしてたし
克服したわけではない
「へぇ〜…和とは行って俺とは行ってくれないのか」
意地悪な陸くんが出てくる
「あの時最初陸くんと行くってなってたじゃん!結局代わったけど…」
怖いものは怖い!
隣で聞いてた和くんに助けを求める
「朝比奈さん、陸は前回僕と行ったことが気に食わないみたい
自分と行くってなってたから余計に…1度でいいから行ってあげて?」
うそ…和くんまでそんなこと言わないでよ〜!
断りにくくなっちゃうじゃない!
「雛、彼のためだ、行ってあげなさい」
「独占欲強いと嫌われちゃうよ〜?」
「そんなんじゃねぇ…」
陸くんが秋ちゃんと和くんに反論してるようだけど、2人に言われ続けて折れたようだ
「もういいよ…そういうことだから、一緒に行ってくれないか?」
陸くんが恥ずかしそうに髪をかきながら私にお願いする
えぇ〜…ここまでくると否定する私が頑固でわがままな子になっちゃうじゃない
「…分かった、入る
ただし、今日の1回だけだからね!
あと、手…繋いでくれないとやだ」
一緒に行ってあげるんだから、これくらいしてもらうもん…
私は陸くんを見る
「あぁ、もちろん
じゃあ行くか
俺たち先に行くから、お前ら後に来いよ」
陸くんが私の手をとる
「はぁ〜い!」
「雛、楽しんでおいでね〜」
「いってらっしゃい」
3人に見送られ、中に入る
中に入ると一気に暗くなる
「それでは今から廃墟となった病院の中に入ってもらいます
3つの赤いボールを見つけ出し、最後に設置されている祠の前に置いてきてください」
案内人として出てきた女子が消えそうな声で話す
「それでは、無事をお祈りしています、いってらっしゃいませ」
そう言って奥へ入って行ってしまった
「行くぞ」
陸くんが私の手を引っ張る
「う、うん」
どのくらい長いのかな?教室2つ分使ってるようだけど…
私は思わず手に力が入ってしまった
「大丈夫か?」
陸くんが私の顔を見ているような気がする
暗さにまだ慣れなくて表情までは見えない
でも、声で心配してくれているのは分かった
「うん、大丈夫」
「なにかあれば言えよ?ほら、いくぞ」
手を引っ張り先を歩く
どうか怖くありませんように…
私は祈る思いで先に進む…
「おねぇちゃん…」
耳の近くから声が聞こえる
女の子の声
それと同時にスカートを引っ張られる
えっ、何?
「痛いよ…」
「きゃー!」
さっきよりも声が近く感じた
「おい、大丈夫だから!」
陸くんに腕を引っ張られる
「今、近くで声が…!」
怖すぎるよ…!
「こんなの録音だって」
陸くんが私に説明してくれる
でも…
ガシッ
「きゃー!!!」
今!足つかまれたよ!!
掴まれた手を振りほどき走り出す
もう無理!!
早く出たい…!
私は怖すぎて目に涙が浮かぶ
「お、おい!」
陸くんが急に走り出した私にビックリしている
「無理無理!」
私は叫びながらどんどん先に進む
もう赤い玉なんでどうでもいい!
私は出ることだけに集中していた
「雛!」
陸くんが私の名前を呼ぶ
呼ぶ声とともに腕を引っ張られる
わっ!
私は陸くんに抱きつく形となった
「落ち着けって
本当の病院じゃないんだから、怖いものなんてねぇよ
俺がついてるから」
ゆっくり、優しい声で私に問いかける
陸くんの甘い香水の匂いが私を安心させる
「それに走ると危ないだろ?
もし転んで怪我でもして大切な体に傷をつくったらどうするんだ
とりあえず、目を瞑ってろ、俺がゴールまで連れてくから」
「うん」
私の返事を聞いて安心したのか陸くんが微笑みながら頭を撫でる
目が慣れてきたのか表情が見えるようになっていた
「よし、じゃあ行くぞ」
私は目を閉じる
陸くんは止まることなくまっすぐゴールに向かっていく
「ありがとう」
私は歩きながら陸くんに言う
「いや、ごめんな」
申し訳なさそうに言う陸くん