「何?」

佐原くんが怪訝な顔になる。まずい。『なんでもない。』と言う前に彼が私の視線を辿ってその先が自身の持つ本であることがわかってしまった。もう観念するしかない。

「あっ、あの、私その本読んだことある。去年の夏休みの読書感想文にしたの。」

『そう。』などの短い相槌または無言で話が終わるのを待った。うっかり話を広げてしまい、早く寝る姿勢に戻りたい、と切実に思っていた。けれど佐原くんは予想外の言葉を発した。