「ゆづか!! どうした?! 敵か! 獣か!」

デフはどこからひとっ飛びしてきたのか、黄金の弓矢を手に持ち、空から落ちてきた。
おお、ゼウス降臨。めちゃくちゃ格好良い。

いやしかし、今はそれどころじゃない。

いきなりの悲鳴に、カウルはびっくりしたらしく、目を丸くしていた。


「……って、総長がいるじゃないっすか。どうしました?」


カウルがついているとわかると、みんなほっと胸を撫で下ろし、取り出していた武器を手の中に治めた。


「治療をしていたら、ゆづかが急に叫んでな。痛かったのか? ごめんな」

「いや、あの……そうなの、びっくりして、ごめんねさい」

顔は熱いまま、しどろもどろに言い訳をした。


「ひどい悲鳴だったぞ。痛みに弱いのか? でも、もう少し消毒しておいたほうがいいぞ。もうちょっとだけ我慢してくれな」

カウルは真面目な顔をして、また首に吸い付いた。


「うひゃあああああ」

擽ったい!
お尻から脳天にかけて、ゾクゾクとしたものが駆け巡る。


「だっ……! もう、大丈夫ーー!」

「暴れるなって、もう少しだから」


ちゅうちゅう首を吸われて、わたしは涙目になる。
助けを求めてみんなを見回すと、デフとバチッと目があった。

デフは呆れたような、気の抜けた顔をしていた。
わたしが恥ずかしがっているだけだと察すると、親が子を見守るような生暖かい顔をして、うんうんと頷いた。